お気に召すまま

ジャニオタの雑記(ジャニーズ関係ないこともある)

舞台演劇に興味なかった私をぶん殴ったEndless SHOCKという作品

舞台観劇を趣味としている人や、それに携わる職の方々からは「お前ぶっ飛ばすぞ」と思われることと思うが、私は「舞台演劇」の良さをあまり分かっていなかった。

親に連れられて幼少期は何度か子ども用のミュージカルを観に行ったりはしていたし、ジャニオタになってからも推しが出ているからという理由で何度か舞台観劇はしたし、友人の勧めで2.5次元と呼ばれる舞台作品も何作か(映像ではあるが)観たことがある。
もちろん私が観た全ての作品は面白かったし、舞台演劇がくだらなく、なくてもいいものだなんて考えは毛頭ないのだがそれでも私はあまりにも舞台演劇の魅力を知らなかったのだと気づいたのは今日、帝国劇場でEndless SHOCKを観たからだ。

25年という歴史があったにも関わらず、私はこの作品を観たことがなかった。

まあ、観たことないジャニオタの方が多数派ではあると思う。ただでさえ舞台作品はチケ代が高いし、自担が出ていない舞台まで追えるほど金銭的にも時間的にも余裕がある人の方が少ないのは当然だ。私もその1人で、キンキ担ではないし、セクラバになっても勝利担ではなかったので流石に舞台作品にまで足は伸ばせんと思って応募すらしたことなかった。
だけどそんな他人みたいな私ですら名前を知っている演目が今年でフィナーレを迎えるとあれば一度くらいは観てみたいと思い、FC先行に敗れて一般枠でチケットを購入して、4/12マチネを観た。

まず帝国劇場に入るのが初めてだった。地面がフカフカ。す、すげえ……(そこ?)一気に金持ちな気分になった。実際は2階のカフェのメニュー見て目ん玉ひん剥く超庶民なのに。
2階席の最寄りの入り口から入ればデカデカと見えるSHOCKのロゴ。そして聴こえるあの日の放課後の学校特有の金管楽器の音、ヴァイオリンの音合わせの音……いや待て、生オケなの????え??生オケなの!?!?!?

ストーリーをミリも知らないで臨んだ私、マジでコウイチが階段から落ちるのとショウリに「コウイチ——ッッッ!!」ってセリフがあることしか知らない状態でのスタート。周りの人はよくここまで私にネタバレしてこなかったと思う逆に。奇跡だろ。
ただ、生オケに度肝を抜かされはしたものの期待値は今まで行った舞台作品と大差なかった。と言うと聞こえが悪いが具体的に言えば「好きか嫌いかはともかくとしてある程度の満足感と付随する感想がいくつか出るだらう」くらいの期待値だった。ストーリーに関する期待をしていた、と言おうか。そう、私は舞台作品は「演者が演じるストーリーを楽しむもの」として認識していたのだ。

もちろんストーリーも良かった。歴史ある演目にはそれだけの理由がある。ただ、何よりいいなと思ったのは劇中劇の存在である。

私のようにSHOCKをミリも知らない人向けに簡単に、めっちゃざっくり説明すると(いる?)Endless SHOCKはNYの小劇場でミュージカルをしている夢見る若者たちが大劇場でのチャンスを掴み、そこに付随する人間ドラマを描いたストーリーである。
こういうストーリーなので当然のように何作も劇中劇が出てくるわけだ。これがとてつもなく私にとっては良かった。

劇中劇なので派手な照明演出、スクリーンを使いまくった映像演出、フライングもあるし派手な衣装もコンセプチュアルなパフォーマンスもある。とにかく私が好き好んで見ているライブコンサートの演出と近いシーンが多いのだ。

そして2階席という少し離れた位置だからこそ全体が見渡せる。舞台の隙間から少し見えるオーケストラ部隊、満天の星空のシーンで天井にまで星が煌めき、ドラムの音に合わせてレーザーが動き、さっきまで屋上だった大道具が反転して舞台に沈み街中のフェンスに変わる。ビルが生え、動き、反転したらスクリーンになる。
もう「いやどこにしまってんだ」と思うくらいドッカンドッカン大道具が出てくる。景気が良すぎる。今まで主に観た舞台はセットの種類がそんなになかったりしたので(それはそれで勿論良かったが)こんなに景気良く出てきたのを見るのは初めてだった。

華やかなステージを見ていたかと思えばステージの背中側に我々はいたり、ステージ裏にいたり、かと思えば再びミュージカルを観る客になっていたり、セットが変われば観客の役目も変わる。傍観者になったり劇中劇の観客になったりするわけだ。

こういうのを見ていると当たり前のことに気づく。そうだ、舞台って演者だけで成り立ってるわけではないのだと。
音ハメ演出がこれだけあれば、オーケストラ部隊の失敗は絶対に許されない。タイミングを出す指揮者のプレッシャーを考えると素人の私には胃が痛い。照明だって映像だってそうだし、衣装替えの時間もかなりシビアだ。大道具だってシームレスに動かさないと違和感が残るし、誰か1人がミスれば致命的。そういう、本当なら奇跡ではないかと思うようなことを確かな努力で起こしているのが舞台なのだと、それが魅力なのだと当たり前のことを突きつけられた。私を魅了した。

双眼鏡で勝利くんの顔を見ればこの一発勝負の舞台に誇りを持った顔をしている。気迫に満ちた舞台の上の勝利くんの顔は、私が一番好きな勝利くんの顔だ。光一くんなんて40を超えた大ベテランなのに2階席に飛んできて、また飛んで去っていく姿は儚い妖精のようだった。そんな顔できるのかと。みんなこの生モノを楽しんでいた。

「舞台は生き物だ」という。劇中のセリフにもあるし、よく聞く言葉だ。それを私は今日身をもって実感した。この舞台は生きている。あの人の血が通っている。勝利や他のアイドルがあの人に見せてもらったものはこれだったんじゃないかと思うほど、私に衝撃を与えた。この作品を10代で観ていればもしかしたら私が目指す職業も、選ぶ進路も違っていたかもしれない。それほどの力がSHOCKにはあった。

同じ舞台を何回も観る人の気持ちをようやくきちんと理解したかもしれない。もちろん推しの仕事をできる限り目に焼き付けたい、知りたいというのもあるだろうけど、舞台特有のこの熱気は、生気は、映像越しよりも生で観劇する方が分かる。クセになる。例え公演が円盤化されて、日替わりアドリブシーンが特典で全部見られたとしても「劇場で観る」という体験はチケットの限りでしか得られない。

金のかかったエンタメの力でぶん殴られてようやく私は少し、舞台演劇の魅力を理解したのでした。

めでたし。